コラム記事
交通事故研修報告
先日(H27.3.20)、東京で行われた日本交通法学会主催の人身賠償研究会に参加しました。同研究会には交通法学の学識者や弁護士、裁判官等多くの専門家が所属しており、この日の研究会も全国から弁護士をはじめとする大勢の学識者が参加しました。
この日は、東京地方裁判所の交通部の部長裁判官ほか3名の裁判官による報告が行われました。
主な報告内容は、東京地方裁判所における最近のトピックとなるような判決の紹介、自動車の運行中に自然災害が寄与して同乗者が死亡した場合の自賠法上の責任の有無に関する研究報告、将来介護費用に関する定期金賠償をめぐる問題点に関する報告でした。
これら報告の中で特に考えさせられたのは、将来介護費用に関する定期金賠償をめぐる問題点に関する報告でした。
交通事故に遭われ、遷延性意識障害の後遺障害を残すこととなってしまった被害者の方やそのご家族にとって、将来介護費を一括して受け取るのか、年金のように分割して定期的に受け取るのか、どちらによりメリットがあるのかということは切実な問題です。
介護費用は、被害者の年齢が若い場合、先に年老いてしまうご両親をはじめとした家族の方々が、どこまで介護に携わることができるのか、将来的にどの程度の費用がかかってくるのかなどの重大な問題を予測することが難しいと言わざるを得ません。できる限り高額な賠償金を獲得し、将来の不安を取り除くにも現状の介護体制とかけ離れた介護体制を立証することは難しく、裁判官を説得できるか悩ましいところです。
例えば、現状病院でみられているが、将来的には自宅に多数の介護設備を導入し、専門の介護士複数体制をとる予定であると主張しても、ご家族による介護の方が安価であり、ご家族による介護ができないというわけでもない場合、どこまで立証できるか難しい問題です。
話し合いがつかず和解が難しい場合、将来の介護費用の問題に一石を投じる解決方法が定期金賠償による賠償方式です。より高額な一括払いの賠償金獲得が困難な場合であっても、将来の事情変更が織り込まれた定期金賠償方式であれば、被害者の方やそのご家族にとってメリットがあるといえます。
報告者である裁判官は、被害者の主張する将来介護費用に疑問を持つような場合であっても、被害者の方にとって有利な将来的事情変更を考慮した結果、被害者の方と相手方保険会社双方にとってメリットがある場合に選択されるべき解決方式であるという価値判断を持って報告をされておりましたが、私もその価値判断にはおおむね賛同できるように感じました。
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