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コラム記事

労働能力喪失率について

2015.06.05 後遺障害休業損害

各後遺障害等級における労働能力喪失率について

交通事故の被害に遭い、後遺症が残ってしまった場合、今後のお仕事に多大な影響が生じることが考えられます。後遺症は仕事への影響を労働能力の喪失と考え、お仕事への支障の程度によって喪失率が算定されます。

具体的な労働能力喪失率は、基本的には残存した後遺症が自賠責保険等で認定された後遺障害の等級に応じて自賠法施行令別表第1及び第2に定められている労働能力喪失率に準拠して算定されます。

各等級において、自賠法施行令が定めている具体的な労働能力喪失率は以下のとおりです。

1級 2級 3級 4級 5級 6級 7級 8級 9級 10級 11級 12級 13級 14級
労働能力喪失率(%) 100 100 100 92 79 67 56 45 35 27 20 14 9 5

ただし、個別の被害者の方の職業・年齢・性別・後遺障害の部位・程度・事故前後の稼働状況・所得の変動等によって、自賠法施行令に定められた後遺障害等級の労働能力喪失率よりも高く算定されたり、低く算定されたりという例外が生じることもあります。

具体的には、以下の3つに大別されます。

分類 後遺症
裁判実務上、後遺障害の内容や程度等について、一応の基準が整備されたものの個別具体的な事実関係のもとにおける認定・評価等が容易ではないもの ・PTSD
・RSD(CRPSタイプカウザルギー)
高次脳機能障害
後遺障害の内容や程度等について認定・評価の基準が未だに整備されるには至っていないもの 低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)
自賠責制度の運用で用いられている労働能力喪失率等につき、個別具体的な事案における認定・評価の在り方に議論があるもの ・低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)
・外貌醜状
・腸骨採取による骨盤骨変形
・歯牙障害/脾臓障害/脊柱変形
・嗅覚障害/味覚障害/鎖骨変形
・腓骨の偽関節/下肢短縮/脊髄損傷

各後遺症における労働能力喪失率について

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。
そして、裁判においても自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が概ね適用されます。

7級以上 9級 12級 14級 非該当
労働能力喪失率(%) 56以上 35 14 5 0

※ただし、労働能力喪失期間が一生ではなく、数年程度に制限されるケースもよくあります。

RSD(CRPSタイプⅡカウザルギー)

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。
そして、裁判においても自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が概ね適用されます。

5級以上 7級 9級 12級 14級 非該当
労働能力喪失率(%) 79%以上 56 35 14 5 0

※ただし、労働能力喪失期間が一生ではなく数年程度に制限されたり、心因的要因の関与を考慮した一定割合の減額がなされたりするケースが多々あります。

高次脳機能障害

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。
そして、裁判においても自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が概ね適用されます。

1級 2級 3級 5級 7級 9級 非該当
労働能力喪失率(%) 100 100 100 79 56 35 0

低髄液圧症候群(脳脊髄液減少症)

自賠責保険において、髄液圧症候群単独では後遺障害等級が認定されず、非該当と判断されます。そのため、大半のケースでは裁判でも労働能力喪失率は0%と判断されます。

外貌醜状

自賠責保険では、症状の程度・立証の度合いに応じ、7級・9級・12級・14級・非該当のいずれかに判断されます。
裁判では、自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が適用されることはなく、労働能力喪失率を0%とする代わりに後遺傷害慰謝料を一定程度増額するという判断にとどまることが多いです。被害者が、外貌醜状による仕事へ影響するような職業に就いている(芸能人・モデル・ホステス・アナウンサー・営業職・ウェイター等)場合は、職業・年齢・性別等も考慮した上で、個別具体的な事案ごとに労働能力喪失率が判断され、そのパーセンテージは一定していません。

腸骨採取による骨盤骨変形

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じ、12級・非該当のいずれかに判断されます。
裁判では、人体で最も大きな骨である腸骨の変形により、労働能力が減少することは考えがたいという理由のもと、労働能力の喪失は0%(認められない)と判断されるか、認められたとしても5%程度、喪失期間も手術から1~2年程度に制限されます。その代わりに後遺傷害慰謝料を一定程度増額するという判断にとどまることが多いです。

歯牙障害

自賠責保険では、症状の程度・立証の度合いに応じ、10級・11級・12級・13級・14級・非該当に判断されます。
裁判では、歯牙障害が仕事に直接的な影響を及ぼすことはないという理由のもと、労働能力の喪失は0%(認められない)と判断され、その代わりに後遺傷害慰謝料を一定程度増額するという判断にとどまることがほとんどです。

脾臓障害

自賠責保険では、脾臓を失った場合は13級が認定されます。裁判でも概ね自賠法施行令が定めている13級が適用されます。労働能力喪失率としては9%です。

脊柱変形

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。
そして、裁判においても自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が概ね適用されます。

6級 8級 11級 非該当
労働能力喪失率(%) 67 45 20 0

変形が軽微な等級の場合は、上記の労働能力喪失率がそのまま認定されない場合もあり、被害者が若年の場合には、脊柱の指示生徒運動性の低下が軽微であるとの理由のもと、期間ごとに異なる労働能力喪失率が認定されるという場合もあります。

嗅覚障害・味覚障害

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。

12級 14級 非該当
労働能力喪失率(%) 14 5 0

裁判実務では、自賠法施行令が定めている上記労働能力喪失率が適用されるケースのほか、これ以上の労働能力喪失率が認められるケースや、全く否定されるケース(労働能力喪失率0%)に分かれています。ポイントは、職務への影響の有無・程度です。料理人の場合は職務への影響が大きいと言えますし、家事労働従事者であれば、ある程度の影響が認められるところでしょう。嗅覚・味覚が職務にまったく関係しない場合は、労働能力喪失率が認められない代わりに、後遺傷害慰謝料が一定程度増額されるにとどまるということが多いです。

鎖骨変形

自賠責保険では、症状の程度に応じ、12級・非該当のいずれかに判断されます。
裁判では、鎖骨変形単体では運動への影響があまり考えられないため、労働能力喪失率が0%(認められない)と判断されることが多々あります。鎖骨変形に伴う痛みが強い場合や、可動域制限がある場合、モデルやスポーツ選手など、仕事への影響が顕著に考えられるケースであれば、一定程度の労働能力喪失率が認められています。

腓骨の偽関節

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。
そして、裁判においても自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が概ね適用されます。

7級 8級 12級 非該当
労働能力喪失率(%) 56 45 14 0

ただし、腓骨の隣にある脛骨が頑丈なため、歩行や立位に影響が少ない場合もあります。特に、被害者の職務がデスクワーク中心の場合で、痛みが強くなく、日常生活へ影響するような運動障害が少ない場合は、上記よりも低い労働能力喪失率が認定される場合もあります。反面、スポーツ選手等職務への影響が大きい場合は、上記よりも高い労働能力喪失率が認定されることもあります。

下肢短縮

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。
そして、裁判においても自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が概ね適用されます。

8級 10級 13級 非該当
労働能力喪失率(%) 45 27 9 0

ただし、下肢短縮の程度が軽微で歩行に影響が少ない場合や、被害者の方の職務がデスクワーク中心の場合で、日常生活へ影響するような運動障害が少ない場合は、上記よりも低い労働能力喪失率が認定されるにとどまる場合もあります。反面、スポーツ選手等、職務への影響が大きい場合は、上記よりも高い労働能力喪失率が認定されることもあります。

脊髄損傷

自賠責保険では、症状の程度や立証の度合いに応じて判断されます。
そして、裁判においても自賠法施行令が定めている労働能力喪失率が概ね適用されます。

1級 2級 3級 5級 7級 9級 12級 非該当
労働能力喪失率(%) 100 100 100 79 56 35 14 0

※1~3級は、四肢麻痺の場合。5級は対麻痺ないし単麻痺。7・9級は単麻痺の場合。

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